息子のパワプロで、『栄冠ナイン』を始めた。
栄冠ナインは、野球部の監督となって、球児たちを甲子園優勝に導くゲームだ。
僕が赴任した「県立テクノポップ学園」の野球部は弱小も弱小で、公式戦どころか練習試合でも勝てないチームである。
そもそも僕自身が野球をよくわかっていないので、監督も弱小と言っていいだろう。
試合では監督として選手に指示ができるのだが、野球用語を知らないのですべてを勘で行っている。
勘にまかせて「引っ張れ!」だの「流せ!」だの指示し、球児も打ったり打てなかったりするわけだが、果たして指示が通っているのかすら疑問だ。
かくして、誰もなにも分かっていない高校野球生活を送っている。高野連としても前代未聞だろう。
しかし、ある日を境にすべては変わった。
栄冠ナインには”転生OB”というシステムがあり、実在のプロ野球選手が高校生(新入生)として入学してくれることがあるのだ。
転生OBたちは、比較的高い能力を持って入学するため、1年生ながら即戦力になりうる人材である。
ある年の春。
わが県立テクノポップ学園に、大谷翔平が入学したのだ。
野球そのものみたいな人間が、なぜ地方大会二回戦どまりを連発しているウチに…?
疑問は尽きないが、ありがたい。ステータスも桁違いだったため、大谷翔平は入学初日にレギュラー入りした。
高畑(3年生ピッチャー)、ごめん。ベンチでいっぱい応援してくれ。
今までワイドショーぐらいでしかその活躍を知らなかったが、ゲームとはいえ自分のチームに入ったことで、彼のすさまじさを思い知ることになった。
基本的にどんな指示を出しても打ってくれる。
もちろんピッチャーとしても起用しているので、剛速球で抑えてくれる。
まさに八面六臂の大活躍。試合を重ね、練習の年月を重ねるごとに、メキメキと強くなっていく。
完全に大谷頼りの布陣で、ついに県立テクノポップ学園は、春の甲子園を優勝したのであった。
なんてすごいんだ、大谷翔平。
ありがとう、大谷翔平。
いま3年生だよな、翔平。
お前が卒業したら俺たちどうしたらいいんだ、翔平。
