
vs 電子ドラム
友達のO君の子供が、ドラムを始めたらしい。
その子は保育園児で、なぜかドラムに興味と情熱がある。
太鼓やカスタネットではない。ドラムセットだ。
親であるO君夫婦は楽器に明るくない。
だから、その子がドラムに夢中な理由はまったく分からないそうだ。
今のところ「保育園で『セッション』を流している」くらいしか可能性がない。
自宅でドラムを練習する手段に悩んでいたので、電子ドラムをオススメした。
O君は楽器に明るくなさすぎて、生ドラムを検討していた。
彼のご近所さんは僕に感謝をするといい。
先日、O君が家に遊びに来た。「買ったよ、電子ドラム!」と言いつつも、表情が曇っている。
「実は、音が出なくて……。ちょっと相談してもいい?」
ヤベ~~。絶対に解決させてほしい。
音が出ないままでは、O君のお子さんの笑顔は目減りし、電子ドラムをオススメした僕の立つ瀬が無くなる。
O君が持参した電子ドラムの説明書をめくって、スピーカーへの出力設定を確認していく。
僕とてインターネットミームと2chのコピペに詳しいだけで、電子機器に強い訳ではない。
それでも頑張って原因を探るのだが、なぜ音が出ないのかはサッパリ分からない。
「念のため、動画も撮ってきたんだよね」と言いながら、O君がスマホの画面を見せてくれた。
映っている電子ドラムのモジュールを観察するものの、おかしな部分は見当たらない。
これはもう、O君の家に行って直接チェックした方がいいかもな…。
そう思い始めた矢先、動画の端に映るスピーカーから、何かがピョコッと飛び出ていることに気が付いた。
電源ケーブルが、コンセントに刺さってないように見える。
「O君。分からないけど、これをコンセントに刺してみると鳴るかもなぁ……」
僕はもう大人なので、「おばあちゃんがやるミスじゃねえか」とも「地方紙の四コマ漫画のオチかい」とも言わないのだ。
刺したら鳴ったらしい。良かった良かった。
子供の笑顔と、自分のプライドが守れた。

ファーゴくん
絶望的に計画性に乏しい人間であるせいか、計画の計画を立てないと、計画を立てられない。
“計画の計画”は、心の準備と言い換えてもいい。
「よし、明日は計画を立てるから、今日は早く寝よう」とかそういう事だ。
いきなり「よし、計画を立てるぞ」とはいかない。無理無理。
なにごとも一回持ち帰らせてほしい。
たとえばミュージックビデオを作る際は、打ち合わせ → 準備 → 撮影 → 編集 とおおまかに工程が進んでいくが、どう考えても計画が重要になる。
ちゃんと計画を立てないと、なにをどこまで作業したか分からなくなりがちだし、うまくいかなかった時にリカバーしづらい。
だから、気持ちをものすごく強く奮い立たせて、エクセルで管理ファイルを作る。
各工程の作業概要と日程、仮の締め切り日などを打ち込んで、プロジェクトを可視化するのだ。
そして、二度と確認しない。
どこにそのファイルを置いたか忘れるからだ。
最近、ようやく『ファーゴ』(1996)を観た。
行き当たりばったりの男が、雑な犯罪計画を立てて、何もかもうまくいかず、最後は情けなく逮捕されていた。
なんか嫌な予感がしてこの歳まで観なかったのだが、理由が分かった気がする。

ヒゲキッチン

武器
ふとした瞬間、自分が武器を手にしていると気づく。
最近義母からもらった、トイレの消臭剤である。
これはたった一滴たらすと、さっきまで親の仇とばかりに充満していたウンコの臭いが、完全に掻き消える優れモノだ。
本当に一滴で臭いがゼロになる。正確には、この消臭剤のアップルの香りで上書きされる。
だから感覚的には、消臭というより、現実が書き換えられたように感じる。
ウンコはもともとフルーティな香りがするもの、と脳が騙されそうになってしまう。
一滴でこの威力。
この容器には数十ミリリットルしか入っていないが、万が一こぼしたら、もうおしまいだろう。
床が強力なアップル臭を放ち続けるのだ。きっと、永遠に。
そんなもん、もう武器では?
人にかけたら、たぶん犯罪だ。知らんけどなんらかの罪の要件を満たすに違いない。
アップルだからまだマシだけど、当然作ろうと思えばコレの悪臭バージョンだって作れるはずだ。
魚とか。うわー、最悪。
足の爪の間に挟まったゴミの匂いとか。自分で言ってて嫌になってきた。
マッドマックスみたいな世の中になったら、これのクセー版をぶっかけ合う最低のバトルが流行ったりするかも。
願わくば、アップルを一滴垂らし続けたいものだ。







