買い物に辿り着けない思考術

それなりの切迫感を抱いて100均に行ったはいいものの、なにを買うのか思い出せず、すごすご退散することってよくありますよね。

「100均」には「スーパーマーケット」でも「ワットマン」でも、なんでも代入していい。
僕は10代の頃からそんな事ばっかりなので、真剣に若年性健忘症を疑ったこともある。

最近気づいたのだが、あまり集中して生きていないことに原因があると思う。

仮に洗剤とシャンプーと豆腐を買いに、家を出たとしよう。

ドアにカギをかけた瞬間から、もうかなり別の事を考えている。
「野球に乱闘ってあるけど、試合中に喧嘩していいスポーツって他にあるのか?」とか。
「おーっと!乱闘です!」じゃないよ。試合が終わったあとにやんなさいよ。

そういうことを考えながら信号を待っている間、側溝にはめられた鉄格子(グレーチング)が気になる。
これ、網目の細さが違うことがあるのは何故? 水はけ能力が違うのか?
あんまり海外にグレーチングがあるイメージないけど、たとえばアメリカだと別の形だったりするのだろうか。

いや、待てよ。マリリン・モンローのスカートが風に吹き上げられてる写真って、普通にグレーチングの上に立ってるな。
あれは地下鉄の風だったはずだ。思い返せば、洋画でグレーチング、全然見たことある。

じゃあ、その、なんだ。いっか。

そういえばマリリン・モンローって野球選手のジョー・ディマジオと結婚してたな。
メジャーリーグにも乱闘あるのか?
あんなでっかい人たちの乱闘、ただじゃ済まないんじゃないか?
薬局に着いているけど、僕はなにを買いに来たんだ???

このように、余計な思考にリソースを割かれて、買うべきものは記憶のはるか彼方に行ってしまう。
困ってスマホのメモ帳を開いても、買い物メモなど用意しているはずがない。
一番先頭のメモには、

「デカシャツスネーク – でっかいシャツを着た蛇。『ま、なにを着てもオーバーサイズなんですけどね(笑)』が口癖」

と書いてある。しょうもない。
一事が万事こうなので、一人で外出する時間の大半はラジオを聞くことにしている。
『きしたかののブタピエロ』等を聞くことにより、自分の思考に意識を向けなくて良くなる。ありがとう、岸さん、高野。

ところで、結局気になって「MLB 乱闘」で調べたら、2025年の乱闘騒ぎをまとめた動画があった。
40分越えの大作だった。投稿者の解説が軽快で面白い。
喧嘩している当事者たち以外もワーッと集まってくるのはなんなんだろう。
後ろの方の人、ただ左右に揺れてるだけで何もしてないぞ。

トイ・ストーリー5

注)『トイ・ストーリー5』のネタバレがたくさんあります。

『トイ・ストーリー5』を観た。おもしれ~。
バズの話は1作目で解決してるし、ウッディの話は4作目で畳んだ。
5作目はさて何をやるんでしょう、と思っていたが、ジェシーと子供の話だった。なるほどね!!

カウガールのオモチャ・ジェシーの物語は、これまでと同様、オモチャとしての生き方の話だ。
解決していなかったトラウマに向き合い、彼女は人生を前に進める。
平行して、今作では子供側の「遊び方」が重要なポイントになっていた。
そして、現代の「遊び方」について描かれた結果として、『トイ・ストーリー』1作目で描かれた”敵”と改めて対峙することになる。

念のため、タブレットのリリーパッドは”敵”じゃない。持ち主のボニーを想う気持ちの強さは、ジェシー達となにも変わらない。
思えば、シリーズの明確な敵キャラって、プロスペクターとロッツォだけではないだろうか。妄執や支配欲に溺れた哀れなジジイたち。
『トイ・ストーリー4』に登場するギャビー・ギャビーは強引なキャラではあったが、きちんとウッディ達と和解して明るい未来に踏み出すあたり、ヴィランとは言い難い。
1作目に登場したシドはどうだろう? 自分のオモチャのみならず、妹のオモチャまで悪趣味に勝手に改造する児童だ。
いかにも敵っぽいし、子供の頃は「な、なんて嫌なヤツなんだ」と思っていたが、ヴィランとはちょっと違うと思う。

そりゃまあ、いまだに「な、なんて嫌なヤツなんだ」とは思うけど、だってシドは子供だ。アンディと変わらない年齢の、たぶん小学生だろう。
シドはオモチャや周囲に対する思いやりに欠けた子供として描写される。ウッディやバズにとってはとんでもない脅威だ。
だけど、それってシドだけのせいか? シドの親はなにしてるんだ?
バズが犬に追われてシドの家に逃げ込むシーンがある。
犬は凶暴だが、ビール缶を床に転がして眠っているシドの父親には近づかない。
バズが間一髪助かるとともに、点けっぱなしのテレビのCMで「自分はオモチャだ」と知る重要なシーンだが、大人になるとそこ以外も目に付くようになった。
この寝ている父親、コイツはシドと話せているだろうか。誰かを、何かを、息子が傷つけているとき、彼に寄り添っているだろうか。
作中の描写の限り、どうもそうじゃなさそうだ。

僕が思うに、ウッディたちオモチャが対峙した”敵”の本質はこれだ。
環境が生んだ、思いやりや想像力の欠如。

『トイ・ストーリー5』でも、別角度からそれが描かれる。
ボニーのご学友たちは、オモチャで遊ぶボニーをグループチャットであからさまにバカにする。
彼らは、それがボニーを傷つけていることに、おそらく想像が及んでいない。シドと同じだ。

インターネット古強者のみなさんはもちろんご存じだろうが、ネットの向こう側には顔が見えなくても人間がいるのだ。
しかし、この原理原則を古強者でも時たま忘れてしまう。生まれて10年も経っていないボニーのご学友たちは、言わずもがなだろう。
本来は、保護者などの大人が教えるものだ。「人を傷つける道具にしちゃいけないよ」と。
あと、「半年ROMりなさい」「コテハンはやめなさい」「**語録系は基本スベってるから、どうしても言いたければ内輪かつ密室にしときなさい」など。

だけど、作中の親たちは、ほとんど自分のデバイスに夢中だ。子供も自分のタブレットに夢中。
デバイスが悪いのではなく、このお互いへの無関心が良くない、と匂わされている。

こういった要素は、言うなれば親世代への説教に近い。
「もっと子供と話しましょうや」という。それはもう、その通りです。

同時に、オモチャの冒険とボニーの成長の描写は、ホントにもう、相変わらず楽しい。
バズとウッディの活躍ぶりもちょうど良い。今回はジェシーとボニーが中心なので、彼らはいかにも「前作の主人公」という感じでアシストしてくれる。
新登場のリリーパッドやスマーティ・パンツ、大量のハイテクバズ達は、今の子供たちが当たり前に触れるオモチャやガジェットだ。
これまでのオモチャの生態系を壊す連中だが、思えばバズ・ライトイヤーもそういう登場の仕方をした。
ジェシーとリリーパッドは、お互い相棒のようなセリフを交わして終わる。ここも1作目の踏襲だろう。彼女たちが、新しいウッディとバズなのだ。

好きなシーンは、ブルズアイと多すぎる馬たちが草原を駆けるところ。今回、数の多さとウンチで笑わせようとしてたな。
ボニーがブレイズに話しかけられず、もじもじするシーンも良かった。あそこで劇場の小さき子供たちから「がんばれぇ~」「がんばって」と優しい声があがったから。
君たちは、その思いやりを忘れないでほしい。本当に。
たとえネットに触れても、決して忘れないで。それに、絶対に半年ROMってくれよ。

連鎖ギター

最初は、瀬名航くんだった。
作曲家の瀬名くんがエレキギターを買いに行った際、僕の友であるギタリスト・小林ファンキ風格が連れ立ったという。
そこで瀬名くんと一緒にヴィンテージギターを試奏したその時、端的に言うと小林は魅入られてしまった。
ヴィンテージの”魔”に憑りつかれたのだ。
ちょっと弾くだけで、憧れの『あの音』が鳴る。ネックに、フレットに、磁石のように指が吸い付く感覚。
瀬名くんはもちろんギターを購入したが、小林も後日、別の店でヴィンテージギターを手に入れた。

という話を、小林とやってるラジオで聞いた。
聞きながら、「いいなあ~~~~~~~~」と思った。
いや、違います。違うんです。いま使っているフェンダーのテレキャスでまったく満足してます。
買いません。ていうか、買えない。子供が中学に上がったばっかりで、ギター買ってる場合じゃない。
ヴィンテージギターなんて、いくらすると思っているんだ。
10万や20万じゃきかないぞ。ちょっとした軽自動車くらいの値段するんだから。

僕はその週末、島村楽器に足を運んだ。
違う違う。大丈夫。ちょっと試奏したくなっただけ。
すいません、そのジャズマスターを試してみていいですか?
・・・ふ~~~~ん。こんなに太い音するんだ? いいね。
値札を見る。ダメダメダメ。全然帰らせてもらいます。
少なくとも今は手が出せない。買うにしても、ジャズマスターってちょっとピーキーな感じするし。
せめて、ギターを習ってる息子も一緒に弾けるようなやつじゃないと。

僕はその次の週、フェンダーのムスタングを購入した。
いや、その、言ったでしょ。息子も弾くんスよ。
ショートスケールで弾きやすいし、ピックアップを改造してて、普通のムスタングよりちょっと音が分厚いしさ。

聞けば、PARIS on the City!の阿久津くんも、最近小林おすすめのエレキギターを買ったらしい。
小林自身は、古いフェンダーUSAを修理に出してみたり、さらにもう一本ギターを買ったりしている。

先日、妖精大図鑑のはじめさんが遊びに来て、『ZOOM FIRE 7010』という珍妙な機器を見せてくれた。
手で軽く持ち運べるサイズなのに、マルチエフェクターとアンプが一体になっている。
面白い。これがあれば、どこでもエレキギターが弾ける。
にも拘わらず、はじめさんはエレキを弾かないらしい。
なんてもったいない!こんな面白い機器があるなら、弾けたら絶対に楽しいのに。
強く勧めたら、「家にあったかも・・・」と言い出していた。いいぞ。

妻のおばあちゃんが、「趣味がなくてねえ」と言うので、ムスタングを持たせて、とりあえずEmを弾いてもらった。
「はじめてやったわ、ギターって!」と笑っていた。

僕はいま、あえて象に食べられることで生息範囲を広げる植物や、ネズミが感染するネコへの恐怖心をなくしてしまう寄生虫を思い出している。
なにかが広がっている。