120年前のレース

夜にぼんやりYoutubeを眺めていたところ、パリ~ニースの生中継が流れてきた。

そう、もうパリ~ニースの季節なのだ。みなさん、時の流れは速いですね。

ちょうどアラフィリップがアタック、その背後にマッテオ・ジョルゲンソンがピッタリと張り付いている。

当然みなさんご存じなはずだが、いちおう説明しておくと、パリ~ニースは8日間かけて行われるサイクルロードレースだ。

フランスのオシャレタウン・パリから、太陽が暖かく照らす南方・ニースへ。
各日100~200kmほど走りながら、総合タイムが一番少ない、すなわち一番チャリが速いヤツを決めるのだ。

あまりスポーツを観戦するタイプじゃないけど、夏に行われる大会『ツール・ド・フランス』はここ数年欠かさず観ている。

各選手が人間離れしているのに、その中でステージを勝つ選手、ましてや総合優勝する選手を見るたび、「バ、バ、バケモノ・・・!」と思ってしまう。

パリ~ニースは8日間だが、ツール・ド・フランスは23日に渡ってレースが続く。
もちろん、毎日アホみたいな距離を走り、アホみたいな山を登るのだ。自転車でアルプス山岳登らされるんスよ。

 

そんなツールの歴史は古く、第一回大会が開かれたのは1903年。

初回大会は、主催者側が人体の限界をよく分かっていなかったのか、1ステージ400kmくらいあったそうだ。死んじゃうって。

パンクやメカトラブルも選手が自分で対処しなければいけないので、すべての工具を背負って走る必要もあった。
(今は帯同しているチームカーなどが自転車をすぐに修理・交換してくれる)

 

僕が大好きなのは、第一回の優勝選手 モリス・ガランのエピソードだ。

ガランは、翌年の第二回大会でもブッチ切りで優勝を果たし、二連覇の偉業を成し遂げる。

しかし、問題はそのあとだ。ツールを観戦していた人から、こんなタレコミがあったという。

「アイツ、レース中に列車に乗ってましたよ」

調査に調査を重ねた結果、この告発は事実であったことが判明。ガランは優勝を取り消された。

とんでもないのは、2位・3位・4位の選手までも、全員仲良く列車に乗っていたことが判明したことだ。

 

長い歴史の中で様々な不正が行われたが、このガランのイカサマがバカバカしくてかなり好きだ。

もし僕が主催者で、大会の始まりがこんな感じだったらすぐやめたくなると思う。

120年も続けてくれてありがとう。今年も楽しみだ。

 

 

春だけクルタ族

物心ついたときから花粉症なので、春が四季の中で最も苦手だ。

苦手、というか、憎んでいる。

目、鼻、口などの、顔に空いている穴のほとんどがメチャクチャになる時期が、毎年やってくるのだ。憎まずにいられようか。

特に目はひどい。かゆみと痛みで開けられない。開いても真っ赤。春だけクルタ族になる。

 

何しろやめてほしいのは、ニュースで流れるスギの映像だ。

今年の花粉はこんなに飛散していますよ~、という趣旨のイメージ映像として、スギの木から黄ばんだ花粉がモサモサと煙る様子が映される。

あんなイメージを見せられても、花粉症の人間たちは「こん…なに……」と言いながら、絶望して両膝から崩れ落ちることしかできないのに。

元気に花粉を飛ばすスギの様子を見ようが見まいが、どっちにしろ苦しむことにはなるのだから、もう全然関係ない映像を流してほしい。

柴犬の赤ちゃんが、カマキリに驚いて吠えている映像とかどうでしょうか。よっぽど良くないですか。

 

泡に覆われた人生

*ウンコの話をします。

都内のスタジオで大きいお花を摘んでいて、ふと気が付いた。

便座内がフワフワの泡で満ちている。

そして、ウンコ本体がフワフワの泡で見えない。

いや、別にいい。便座くん、ご配慮ありがとう。

自分が出したはいえ、見たくないときってあるもんな。

このフワフワの泡の”隠す力”たるや、その後落としたトイレットペーパーすら飲み込んで、影も形も見えなくするほどだ。

おまけになんのニオイもしない。

ちょっとの不快感も与えませぬぞ、という強靭な覚悟を感じる。

すごいトイレもあるもんだな、と思いつつも、ある不安がよぎった。

幼少期からこのトイレを使って育ったら、”ウンコ”を知らない人間が出来上がってしまうのでは?

物心ついたときからフワフワ泡タイプのトイレだけを使う、大富豪の子供がいたとしよう。

出したモノも、拭いたペーパーも、すべては泡に覆い隠される。

そんな生活に疑問を持つことなく、やがて成人して一人暮らしを計画。

豊かな実家を飛び出し、ワンルームで新しい人生を始めるのだ。

不安と希望が入り混じる、転居初日。

ふと便意を催し、急いでトイレに駆け込み、無事に事を済ます。

便座から立ち上がり、ふと視線を落とすとそこにはー

マジでどうなるんだろう。気絶するんじゃないか。

転転飯店とでかい墓石

転転飯店のコント公演『スケスケ・ア・ゴーゴー』を観に行った。

涙が出るくらい笑った。本当におもしろかった。

劇場も満員で、全ネタばっちりウケていた。

平山犬(大学の後輩かつ、お友達)が書くコントが好きなので、たくさんの人が見るようになり、勝手に僕も嬉しい。

彼は、「人をいやな気持にさせたくない」という願いと、「なにがなんでもウケたい」という欲求を、矛盾することなく脚本にできるヤバい人間の一人だ。

その二つを両立させることは異常に難しいにも関わらず、なんかずっと飄々とやってのけている。

 

衝撃を受けたのは中盤、舞台の転換時であった。袖から、でかい墓石が出てきたのだ。

小柄な人間サイズくらいの、リアルで存在感のある小道具の登場。

なぜか感動してしまい、「ウワー」とちっちゃい声がでた。

前の公演ではきっと作れなかったであろう、でかい墓石。

前よりスケールアップした劇場だからこそ映える、でかい墓石。

 

そんなでかい墓石を、中村くんが抱きしめ、横倒し、一心不乱に掃除している。

 

めちゃくちゃ面白かった。物理的にでかい墓石が”そこにある”からこそだ。

前ならマイムでやっていたであろうネタが、でかくてリアルな小道具を使ってできる。

 

成功の基準は人それぞれだし、上を見上げたらキリがない。

けど、「でかい墓石を好きにできるようになった」は、まぎれもなく成功の証だ。

応援している二人が、好きなことをやって成功するのは、ただただ嬉しい。

そのうちワイヤーで空飛んでほしいな。