最初は、瀬名航くんだった。
作曲家の瀬名くんがエレキギターを買いに行った際、僕の友であるギタリスト・小林ファンキ風格が連れ立ったという。
そこで瀬名くんと一緒にヴィンテージギターを試奏したその時、端的に言うと小林は魅入られてしまった。
ヴィンテージの”魔”に憑りつかれたのだ。
ちょっと弾くだけで、憧れの『あの音』が鳴る。ネックに、フレットに、磁石のように指が吸い付く感覚。
瀬名くんはもちろんギターを購入したが、小林も後日、別の店でヴィンテージギターを手に入れた。
という話を、小林とやってるラジオで聞いた。
聞きながら、「いいなあ~~~~~~~~」と思った。
いや、違います。違うんです。いま使っているフェンダーのテレキャスでまったく満足してます。
買いません。ていうか、買えない。子供が中学に上がったばっかりで、ギター買ってる場合じゃない。
ヴィンテージギターなんて、いくらすると思っているんだ。
10万や20万じゃきかないぞ。ちょっとした軽自動車くらいの値段するんだから。
僕はその週末、島村楽器に足を運んだ。
違う違う。大丈夫。ちょっと試奏したくなっただけ。
すいません、そのジャズマスターを試してみていいですか?
・・・ふ~~~~ん。こんなに太い音するんだ? いいね。
値札を見る。ダメダメダメ。全然帰らせてもらいます。
少なくとも今は手が出せない。買うにしても、ジャズマスターってちょっとピーキーな感じするし。
せめて、ギターを習ってる息子も一緒に弾けるようなやつじゃないと。
僕はその次の週、フェンダーのムスタングを購入した。
いや、その、言ったでしょ。息子も弾くんスよ。
ショートスケールで弾きやすいし、ピックアップを改造してて、普通のムスタングよりちょっと音が分厚いしさ。
聞けば、PARIS on the City!の阿久津くんも、最近小林おすすめのエレキギターを買ったらしい。
小林自身は、古いフェンダーUSAを修理に出してみたり、さらにもう一本ギターを買ったりしている。
先日、妖精大図鑑のはじめさんが遊びに来て、『ZOOM FIRE 7010』という珍妙な機器を見せてくれた。
手で軽く持ち運べるサイズなのに、マルチエフェクターとアンプが一体になっている。
面白い。これがあれば、どこでもエレキギターが弾ける。
にも拘わらず、はじめさんはエレキを弾かないらしい。
なんてもったいない!こんな面白い機器があるなら、弾けたら絶対に楽しいのに。
強く勧めたら、「家にあったかも・・・」と言い出していた。いいぞ。
妻のおばあちゃんが、「趣味がなくてねえ」と言うので、ムスタングを持たせて、とりあえずEmを弾いてもらった。
「はじめてやったわ、ギターって!」と笑っていた。
僕はいま、あえて象に食べられることで生息範囲を広げる植物や、ネズミが感染するネコへの恐怖心をなくしてしまう寄生虫を思い出している。
なにかが広がっている。


