「光の旅人」とは


空中カメラのギター/パーカス担当・寒川響が小学生のときに書いたファンタジー小説。
誤字・脱字含め、当時の文章をそのまま掲載しています。

光の旅人 第一部 光と闇の伝説

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一ノ章 光の書


プロローグ


昔、ハルメスという大きな国があった。

火の種族、水の種族、森林の種族、大地の種族、雷の種族などの全員が住めるほどの大きな国だった。
そしてそれを全て 神ガルラがおさめていた。

全ての種族は冬にあつまり、ロリアとよばれる力量をためす競技をおこなった。すさまじい競技で毎年死者がたえなかった。しかし それでもおこないつづけたのは、競技で一番強い種族とみとめられたら、魔術師ログナスがその種族の族長のねがいをかなえてくれるのだ。

しかしガルラは競技を見ない。
ログナスがガルラにロリアの様子を伝える。

そして今年もロリアがおわった。その時、人間がせめてきた。明らかに人間の方が人数が多いし、ぶきも多い。

ハルメスの種族はどんどん追いつめられ・・・。

とうとう残ったのはわずかな火と森林の種族だった。だが、火の種族の若者一人が 平和協定をむすぼう と言いだした。人間もまよったあげくに首をたてにふった。

しかしロリアはつづけられた。
ある年 森林の種族がめずらしく勝った。
「のぞみはなんだ?」ログナスが言った。
森林の族長 アルはのぞみを言った。 のぞみを聞いて、ログナスは考えこんだ。
「ううむ。できなくもないが・・・。」
「たのむ。おれのねがいをかなえてくれ。」
「わかった。ガルラには言わぬよう。」
「よし!おれはこの日をまっていた。」
アルはよろこんで その場をあとにした。
いや、もうアルではない。アル・ガルラ。<アルは神>。そうよばれるようになる。
「おれはハルメスをおさめる 闇の神だ!」

1、ステラのペンダント


「ステラ、起きろ!!朝めしだぞぉ!おい!!」

ステラはまだわらのベッドでねていた。
しかし おじのケルの声で目が少しあいた。
「ううー・・・。えー。まだすっごくねむたいよぉー。」
「バカいうな!もう13だろ!」
「おじさんだって46歳じゃないか。どなると のどにわるいよ。」
「つべこべ言わずに起きてこい!」
「はぁーい。」
ステラはベッドをあとにして居間へといそいだ。首にしっかりとおまもりの星のペンダントをくっつけて。
「いつもおそいな ステラ」
「おそかぁないよ。だって毎日この時間だ。」
ケルは、負けた、という風にかたをすくめた。
「ところで今日の朝はお肉少ないね。もしかして・・・。」
「ああ、肉はなくなった。獣山でとってこい。」
ステラはため息をついた。
「やば・・・。今日、明日と雨がつづきそうな雲の形なんだよ。けっこうな量とってこないとしのげないね。今、晴れてるけど・・・。」
「じゃ、がんばれ。早く行ってこい。雨がふらないうちにな。」
「そんな無せ・・・。」
ケルは最後まで言わせず やりとふくろをもたせて、さっさと家からおいだした。
そしてステラの目と鼻の先でとびらをぴしゃりとしめた。
「まったく・・・。」
ステラはまだぶつぶつ言いながら 家をあとにした。

ちなみにここはケルナ国、メル村、獣山のふもとの家だ。
動物がたくさん住んでいるから獣山なんだそうだ。
うさぎが特に多い。大きな獣山のちょうどまん中あたりにうさぎがいる。まん中といっても1000メートル近い地点。ステラはこれまでに何回もそこまで行ってきた。
しかし何回登っても思いは同じ。ものすごくつかれる。やりをつえのようにして登るのだ。しかも今日は朝ごはんの途中でおいだされた。
<もうほんとに、やんなっちゃうよ。何びきもうさぎをとってこないといけないのに・・・。もうちょっと食っときゃ良かった・・・。>

ステラはごつごつする山道を必死で歩いた。おなかもすいている。
2時間ぐらいしか歩いていないのに一年まるまる歩いたような気がする。
やっとの思いでうさぎがたくさんいる場所についても、うさぎを狩るどころかその場にたおれこんでしまった。
しかし・・・。
ポツ・・・・ッ。ポツッ・・・・。
雨が少しずつふってきた。
「やべっ・・・。」
ステラは雨でつるつるとすべる やりをしっかりにぎりしめた。
むくっと起き上がって、きょろきょろとあたりを見回して、うさぎをさがした。
<しめたっ!!>
一ぴき穴に入りおくれて、おしりのあたりを草むらからのぞかせている。
<よーし。>
ステラはこっそりこっそりとうさぎに近づいた。
あと3メートル・・・雨がはげしくなってきた・・・あと2メートル・・・足もとがぐちゃぐちゃだ・・・あと1メートル・・・なんだろう?ペンダントが光った気がした・・・。
やりをふりあげ・・・。
ヒュン、ザクッ。
うさぎが早かった。
やりは空しく地面につきささった。と同時に、本能的にやりを放したステラは地面にもろにたたきつけられた。
「いててて・・・。うわっ。服とかみの毛がぐちゃぐちゃ。あれっ。」
ペンダントがまばゆいばかりに光っている。
起きあがったステラは思いもしない物を見た。

本だ。

本の方も光っている。重たい体を起こし、本の方に近づいた。見たこともない文字が表紙に書いてあった。しかしステラにはわかった。たぶんケルが見てもわからないだろう・・・。

「ヒカリノ・・・ショ。光の書?」
その時、ペンダントと光の書がものすごい光とパワーにあふれ、ステラをつつんだ。

9時12分。ステラ、光の書、ペンダントが、そこにいたはずの三つが消えた。
やりとふくろをのこして。

 

2、ゴルゴンと市場のじいさん


その日ゴルゴンは市場にいた。パン屋で働いているゴルゴンはパン屋のマスターに小麦粉を買ってくるよう言われていたのだ。そして市場に入ったその時から、お守りの星のペンダントが光っていた。
ゴルゴンは無口で、目立つと気分が悪くなるタイプなので、一回 市場から出ようと思った。
しかしゴルゴンの家は貧しく、パン屋にもおなさけで働かせてもらっているのだ。だからマスターにさからえばすぐにクビにされてしまう。
というわけで市場にもどったゴルゴンだったが、やはり周囲の目が光るペンダントにあつまってくる。
この市場の商人はふつうテントを使う。ゴルゴンは周囲の目をのがれるため一つのテントににげこんだ。
「おじゃましまーす」
「ほう。久しぶりじゃの。客人がくるとは。なにを買うかね?」
中でいすに座っているじいさんが、ゴルゴンを見ずにそう言った。
「あ、小麦粉下さい。ありますよね、小麦・・・?」
ゴルゴンはあることに気がついた。小麦のとなりの本が光っている。ペンダントと引かれ合っていた。
そこでじいさんが、はじめてゴルゴンを見た。

「なんと!お前さん<選ばれし光の者>の一人か!お前さんだったのか!名をなんという?」
「えっ、あ、ゴルゴンです」
「ステラではないな。ということはゴルゴン、お前さんは<光の勇者>だ!」
あの本とペンダントの光は強くなっていく。
「さあ、これを受けとれ。」
じいさんは剣をとりだしてゴルゴンの方にやった。
「ばかばかしい。もう帰りますよ。」
ゴルゴンは出口に向かった。しかし、本とペンダントの光が頂点にたっした。
そして光がゴルゴンをつつんだ。
「時間がない!受けとれ!」
じいさんは刀をゴルゴンになげた。
「あなたは、いったい・・・。」
ゴルゴンは剣を受けとってたずねた。
「わしか?わしの名前はガルラじゃ。知っとるはずじゃの。」
「神・・・ガルラ?」

そしてゴルゴンは9時12分30秒きっかりに消えた。本もいっしょに。
ガルラはゴルゴンが消えた場所に向かってぽつりと言った。
「いかにも。わしは神ガルラじゃ。やくたたずの いくじなしのな・・・・。」
ボン、と音をたてて、ガルラとテントが消えた。
消えたことはだれも気がつかなかった・・・。彼、以外は。
「勇者が見つかったか・・・。あとは使者一人だな。フフフ・・・。」
ラルア国の市場を水晶で見ながら アル・ガルラが言った。

3、サリアが見たもの


「まてーっ!!」
「へへーん。とれるもんならとってみろよ!追いつけねぇだろぉー。」
ラルア国ハルロ村の公園。その日、サリアは村一番のいじめっこ、ラッセルにペンダントをとられて、追いかけっこの最中だった。
サリアは足が速いほうではない。運動は苦手で、弓ぐらいしか得意な事がない。
弓矢のうでは、うてば百ぱつ百中というほど、うまい。
ただ走るのが苦手だ。
「まちなさーい!それ大切なものなのー!」
「この星の形のペンダントが?だったらぜったい返さないぞ。王様にわたしちゃうもんねー。」
「うー・・・。」
サリアはへとへとだった。さっきから走りっぱなしだ。
<どうしよう・・・。>
しかしラッセルも5メートル離れたところで息を切らしている。
<よーし・・・。>
サリアは2,3歩下がった。そして・・・。
「やあっ!!」
サリアは前方にとんだ。
「うわっ!!」
ラッセルはサリアがドンとぶつかると同時にペンダントを放した。
それをサリアがキャッチした・・・まではいいが、サリアはそのまま草むらに飛び込んだ。
ペンダントが強い光を放った。
「おかしいな。なんで光ってるんだろ。あ、いたっ。」
立とうとしたら、ひざがすりむけて、だらだらと血が流れていた。
「いてて。まあいいや。帰って治せば。あ、 本?」
目の前に本があった。ペンダントと同じく光を放っている。

その本をどろだらけの手でさわってみた。
その時、体が不思議なパワーで満ちあふれた。
ひざのきずが消えていく。
とつぜん、ドスン。
光で体があふれ、サリアは9時13分ちょうどに消えた。
そして、サリアは真っ白な部屋にうつった。
そしてどこからともなく すぅーっと老人が現れた。
「サリア、時間が無いのじゃ。てっとり早く話すぞ。今からお前は・・・」
「ちょっとまって。おじいさん、何であたしの名前を知ってるの?」
サリアは老人をまじまじと見ながら言った。
「時間がないのじゃよ。お前はラルア国の国境に行け!そこで2人の少年に出会う!森林の王は闇の王になったのじゃ!三人で旅をし、闇の王 アル・ガルラと闇の兵をたおせ!魔術師を無力にするのじゃ!そうすれば・・・・・。そうとも、莫大な数の闇の兵も、いつかはたおれるはずじゃ。」
そこまで言うと老人は息をつぎ、手の平を天井に向けて呪文をとなえた。
ポン、と音がして、老人の手に弓と矢が一本だけ入った、弓と矢を入れるふくろが現れた。
「これをうけとれ。大丈夫だ。矢はうってもうっても減らない魔法がかけられている。」
サリアはそれをずっと、ぽかんと見ていた。
「あなたはだれ?」
今までそれを聞かなかった自分にびっくりしていた。
「わしか? わしは神じゃ。世界で一番だめな神じゃ。一人でアル・ガルラがたおせん。」
「神?神 ガルラなのですか?」
「おお、サリア。敬語などつかうな。もう出発の時間じゃ。『光の書』とともにな。弓矢を早くとれ。さようなら。」
すっかりわすれていたペンダントと『光の書』と呼ばれたさっきの本がまた光りだした。
サリアは弓矢をとって、ペンダントをそっと首にかけた。
そしてサリアは光につつまれ、ラルアの国境へワープした。
そしてその日の昼、ケルナで一件、ラルアで二件 火事があった。
その家の住人は亡くなったという。ステラ、ゴルゴン、サリアの家だった。

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二ノ章 四人の旅人


4、出会い


「ここはどこ?きみたちはだれ?」
長い沈黙を破って第一声をあげたのは、片手に光の書、片手にありふれた剣を持った、茶色の長いかみの毛の少年だった。
「たぶんラルア国境よ。あなたたちが<二人の少年>ね。」
ブロンドの髪の、弓矢を持つ少女が口を開いた。
「それより、ガルラ様が言ってたのは、ラルアとケルナをまわって人を味方につけろって言ってたわ。闇の王と魔術師をたおせ、って。」
「それより本を開こうよ。ヒントがあるかも。みんな名前は?ぼくはステラ。」
さっきの茶ぱつの少年が言った。
「ぼくはゴルゴン。ゴルゴン・マグ。」
ずっと口を開かなかった、黒いくしゃくしゃのかみの、大きな剣を持った少年が言った。
しかし顔はうつむいていて見えなかった。
「あたしの名前はサリア。さあ、えーと・・・、そう『光の書』!『光の書』をひらきましょう。」
三人はいっせいに『光の書』を開いた。しかし中は白紙だった。
「なんだ・・・。なにも書いてな、うわっ!」
ステラの『光の書』がはげしく光り出した。
つづいてサリア、ゴルゴンの『光の書』も強い光を放った。
かみがさかだち、体がふるえた。
光は国境のかべより高く上がった。その3つのケルナがわの人々がゆびさし、
「神の光だ!神の光だ!」とさけんだ。

だんだん光がおさまり、そして・・・・。
「あ!文字がうきでてる!」
きらきらと光る文字がでてきた。

三人の旅人。勇者なる者は、ゴルゴンなり。使者なる者はステラ、サリアなり。
一人はうらぎりもの。一人は死す者なり。
闇の王に勝つ者一人。兵を多く倒す者一人なり。

「うらぎり・・・もの?この中に!?」
ゴルゴンが信じられないというふうに言った。
「何?この中の一人が死ぬの?なんてふざけた本かしら!」
サリアはぴしゃりと本をしめた。しかしステラは『光の書』を見ながら つっ立ってぶつぶつ言っていた。
「ねえ・・・。これ旅をするのはぼくたちだけじゃないんじゃない?」
「え?」
ゴルゴンとサリアが同時に言った。
「だって、うらぎりものと、死す者と、闇の王を倒す者と兵を多くたおす者でしょ?四人じゃない?」
「でも一人二役ってこともありうるわ。」
「でもはっきり一つの役には一人って書いてあるよ。」
「ステラとあたしが使者。ゴルゴンは勇者!」
すわりこんで うつむいていたゴルゴンが顔をあげた。
「でもぼくは勇者の器じゃない・・・。でもガルラ様がぼくが勇者だと言って、この剣をわたしたんだ。たしかに剣のあつかいにはなれてるけど・・・。やっぱり勇者じゃないよ。闇の王は・・・、たおせない・・・。」
ゴルゴンはまたうつむいた。しかし、
「きみが闇の王をたおすとはかぎらないさ。ぼくにおしえてよ。剣術をさ。うまいんだよね。」
「でも・・・」
「まあ、とりあえずラルアをまずまわってみようよ。ここにいたって、闇の王が死ぬわけじゃないしさ。」
「ステラの言う通りよ。敵は強大でも、こっちは3人よ。」
サリアが力をこめて言った。そして・・・
「でも敵は何万人だ。」とゴルゴンが剣と『光の書』を持って言った。
「一人よりはいいわよ。さあ出発ね!」
サリアが東へと歩をすすめようとした。
「まって!道がわかんない。」ステラがとつぜん言った。
「たしかに。ぼくもわからない。サリアは?」
「わからないに決まってるわ。だけど道案内人を探すのよ!ラルアではたくさんいるわ!こっちよ!」
サリアは東に向かった。ステラとゴルゴンはかたをすくめた。
「すっごい女の子だったね。きみラルアの人だよね、ゴルゴン。道案内人のことは知らなかったの?」
「知らない。ぼく 家から外に出ること、あんまりないから。」
二人はサリアについていった。

「そろったな。やはり道案内人をさがしたか。行け、ゲリア。」
「はい。おおせのとおりに。」

今、アル・ガルラ軍の隊長、ゲリアが闇の塔ハグルをあとにした。

 

5、道案内人のヘン

「サリアー!ここはどこぉー?」
きっとサリアもゴルゴンも知らないであろう、草原を一行は歩いていた。
しかもステラとゴルゴンは前方のサリアから30メートル離れていた。
「あたしだって知りたいわよぉー!もしかしたら村への近道になるんじゃないかと思ってぇー!」
というふうに大声で話さないと聞こえない。
「ステラ、大声だすと疲れるだけだよ。とりあえず・・・。」
とりあえずなんなのかは聞けずじまいだった。
「みんな来てぇー!!はやく、はやく!!」と、サリアがさけんだ。
ゴルゴンはまよわず走り出し、ちょっとためらってステラも走り出した。
今、ステラは大きなふくろを持っていた。
ゴルゴンが2日前に見つけてきて、荷物ぶくろにしたのだ。食糧も入っている。
「足あとがあるわ!ほら!」
「たしかにある。だれのだろう?」
「道案内人に決まってるわ!普通の人なら、こんな道歩かないもの!ぜったいそうだわ!」
それから30分 足あとを追ってみた。
そして、やって前方に人影が見えた。
「だれかな・・・。人がいるね。」
「いってみましょう!」
3人は人影に追いついた。一行と同じ方向に向かっている人物だった。チェックのがらの長そでに、茶色の長ズボンをはいた、赤毛の少年だ。
「あの・・・。あなたはラルアの道案内人ですか?」
サリアが聞いてみた。少年が答えた。
「そうだよ。じゃなきゃこんな道、歩かないさ。僕はヘンていう名前だよ。きみたちは?」
「あたしはサリア。大きいほうがゴルゴンで、小さいほうがステラよ。」
「よろしく。」
ヘンはステラに手をさし出し、ステラも握り返した。
他の二人の間でも同じ光景が見られた。
「さあどこへ行く?」
ヘンが聞いた。
ゴルゴンが答えた。「一番近くの村。」
「じゃあ草原をこえて、ラムヨ村だ。行こう!」
四人の旅人は草原を進んだ。

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三ノ章 闇兵ハグルラ


6、ラムヨ村


「あと少しでラムヨ村だ!もうそろそろ出発しよう。」
軽い食事をとったあと、四人は自由にすごしていた。
ゴルゴンとステラは剣のけいこ、サリアは弓矢をうっていた。
「そうだね。」ステラとゴルゴンは剣をしまった。
しかしサリアは弓をしまったものの、別の方向へ走って行ってしまった。
「おーい!どこいくのサリアー!?そっちじゃないよー!」
ステラはさけびながら走りだそうとした。しかし何か持ってサリアは帰ってきた。
うれしそうな顔をしている。
「うさぎがちょうど4匹手に入ったわ。しばらくは食べ物に困らないわね。」
ヘンもうなずいた。そして、
「じゃあラムヨ村まで案内するよ。ついて来て。」
うさぎをふくろにつめ、一行はまた出発した。
途中、蚊が多くて困ったがヘンが冗談を言って、みんなの注意を蚊からそらしてくれ、だいぶにぎやかになった。
しかし、一時間後に村についてみると、みんな体のあちこちがかゆくてしょうがなかった。

それもおさまりかけたころ、やっと一行は、どこかぼろい村門をくぐりぬけた。
ラムヨ村はすさんでいた。
村の家々はこわれ、家とは言えない状態だった。
木々は一本もなく、人の気配がしなかった。
しかし、一つの家(らしきもの)の中から、人が一人出てきた。
ひどく貧しいという感じの男で弱々しい声でたずねてきた。
「あなたたちはなんですか?」
なんですか、というのはどの生き物か、という意味で聞いているらしい。
「ぼくたちは・・・、人です。」
ゴルゴンがためらいがちに答えた。しかしその言葉で男の顔はよろこびにあふれた。
「人!闇兵じゃない!?みんな!久しぶりだ!この村に人が来た!」
その一声で家々から次から次へと人が顔をのぞかせた。
そして次のしゅんかん、わああっと歓声があがった。
「あの・・・、ぼくたち、その闇兵っていうのに勝つためにここへ来たんですけど・・・。あなたたちの協力が必要です。」
歓声がピタリとやんだ。
「協力?わたしたちに協力は無理です。」
「どうして?」
「あの50人の闇兵にこの村はほろぼされました。生きのこったのは82人。そのうち大人の男はたった23人なんです。」

 

7、召集

ステラたちはだまりこんでいた。どう考えても勝ち目のない戦いだ。
やはりこの村を救うのはおそすぎたのだ。
しかし、とつぜん
「勝てます!死ぬかくごがあるのなら!」サリアが声をはり上げた。
「しかし・・・。」
「剣はありますか?」ゴルゴンも言った。
「はい、あります。闇兵からかくしたものが。しかし、わたしたちは剣をあつかえません。」
「ぼくと、このステラがお教えします。時間はありますか?」
「いちおう・・・。あさってまで来ないと思います。」
「ならば今すぐ男の人たち、戦える人たちを召集します!剣もわすれずに!」
ゴルゴンは最後につけたした。
「あ、あと今晩とめてもらえます?」
「も、もちろんです。」
男は家々をまわりながら答えた。
そして集まった者は、男全員と女も数名。合計28人だ。
さっきの男と、ステラ、ゴルゴン、サリア、ヘンを入れれば33人。
なんとかなりそうだ。
そして剣のけいこがはじまった。3時間がのろのろとすぎ、けいこはまだ続けられた。
しかし・・・・。

ブオーーー。

角笛の音がした。
東の方角から闇兵たちが来た。
「おかしい!来るのが早すぎる!」
男たちが口々に言った。
よろいを身にまとった闇兵ハグルラ軍がラムヨ村に入った。
子ども、女、老人は家にひなんした。
空がたそがれにそまり、サリアは火をおこした。
「知ってる?闇の者のもとは森林の種族なのよ。さあ、これに火を!」
サリアは来る途中にひろった木を人々にわたした。
人々はそれに火をつけた。
「戦とう開始ィ!」
ゴルゴンが先頭に立って、剣を振り上げた。人々もそれにつづき、たそがれの空に剣をふり上げた。

第二部へつづく

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