電車がかなり苦手なので、たいていの場所へは車で行くことにしている。
飛行機も苦手。自転車はオッケー。バイクも平気。でもバスは苦手だ。ずっとそうだった。
運転免許を取ってから、「人生最悪~~~~!!!」という気分がかなり減衰したのを覚えている。
ギターやおもちゃ楽器(あとアイロン台)を、周りの人に頭を下げながら、バスや電車で運ぶ必要がなくなった。
ラジオを聴いて一人で笑っても怪しまれない。自分の車の中なら声を出して笑っていい。
どんなにガタガタする古い車に乗っていても、電車に比べれば天国だった。
快適さとは別に、「自分がコントロールできる」という点も重要だ。
電車やバス、飛行機の遅れや事故は、乗客の僕にコントロールできない。
車で目的地に向かうときは、道の選択やアクセルの加減は僕次第だ。
仮に事故にあって死ぬとしても、死の瞬間までに選択肢はいくつもある。
最後にハンドルをきるのは右か左か。ブレーキはどのタイミングで踏むか。どうせなら自分で選びたい。
これが飛行機だとどうだろう。「当機はこれから墜落します。スマソ。」とアナウンスされた場合、選べることはあまりに少ない。
飛行機に乗るたび思い出すのが、ラングドン教授だ。『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズの主人公、ロバート・ラングドン。
彼は、爆発するヘリから、パラシュートなしで飛び降りたことがある。大学教授のおじさんなのに。
機内にパラシュートがないことが分かると、ラングドン教授が手に取ったのは防水シートだった。
4×2mのシートをガッシリと握って、高度3000mから川に向かってジャンプ!
大怪我したものの、教授は生還していた。
いくらなんでもウソすぎる、と思いつつ、いざ自分の乗った飛行機が墜落するのであれば、僕は防水シートを探すだろう。
防水シートがなければ、ひざ掛け毛布で飛んでみる。
それこそが、僕が選択できるわずかな手段だ。