阿久津くんの差し入れ

PARIS on the City!の小林ファンキ風格と、ラジオ『小林ファンキ風格のfunfunfunNight!』をやっている。

いちおう作家という名目なので、コーナーやメールの管理をしたり、構成らしきこともしているが、最近はもう普通にしゃべっている。
しょうがないじゃん、しゃべりたいし・・・。

同じくパリスのドラマーである、阿久津くんが先日ゲストで来てくれた。

阿久津の生々しくも爽やかな生活を記録した、Vlog風のYoutubeチャンネルを自分で運営している彼は、「おいーーッス!」と言いながらカメラ片手に登場。

「これさ、差し入れ・・・。」と、手持ちの袋から、派手な色水が入っているペットボトルを手渡してくれた。

フルーツフレーバーの、あんまり見たことないミネラルウォーターだった。

阿久津くんは、「差し入れって、ムズカシーよね!?」と言いながら笑っていた。

学生時代に彼が同じ班だったら良かったのにな、と思った。

 

午前3時のプ

前回書いたように、家でも眠れないような人間なのだが、法事で四国に帰省するときは、普段よりも寝不足を覚悟しなければいけない。

泊まるホテルのベッドにも当たりはずれがあるのだ。
ひどい時は、ベッドよりも床のカーペットの方が柔らかかった。

今回の初日の夜は、健康ランドで仮眠を取ることになっていた。
これは厳しい。
「覚悟の準備をしておいてください!」とワザップジョルノの声が脳内で響く。
「健康ランドで寝る」という行為が、どこか裏ワザっぽいせいだろうか。

リクライニングチェアが所せましと並ぶ休憩スペースに到着したのは、夜中の2時近くだった。
かたい手触りの毛布を掴み、チェアに潜り込んで目を閉じるものの、周囲には大量の人間がいて落ち着かない。

この部屋中の人間が、可能な限り静かにしようと努めている。
できるだけ身じろぎせず、呼吸や咳は最小限に。
24時間稼働している自動販売機の駆動音が、巨大なエンジン音に聞こえる。空気を読めよ。

まどろむ事も難しい3時半ごろ、空間に銃声のようなオナラ(ブキューーン!!)が鳴り響いた。
しかも2発。
オナラカウボーイの居所はわからない。どこから鳴ったか分からないくらいデカい音だった。

隣に寝ていた男が、小さな声で「ふざけるなよ・・・」と言っていた。
僕もまったく同じ気持ちだったが、30分後、そいつもガラスが割れた音のような高音のオナラ(プキィン!)を繰り出していた。

 

ヨウスコウカワイルカと睡眠

眠れない夜は、いろいろな事が頭をよぎるものだ。

そんな日は『認知シャッフル睡眠法』というのを試している。
関係ない言葉をたくさん並べて、”思考する”暇を与えず、脳を寝かしてしまおう、というやつだ。

単語と単語は、関係なければないほど良い。

たとえば「ヘリコプター」から始めたとして、次は「海ブドウ」。

「海ブドウ」、「等高線」、「コピーライター」、「遮魂膜」、「ヨウスコウカワイルカ」…。

ヨウスコウカワイルカ?

ヨウスコウカワイルカはその名の通り、中国の揚子江に生息していたイルカだ。
かなり奇抜な見た目をしている。
ながーいクチバシ、他のイルカよりは上のほうについているつぶらな瞳。
僕が好きなのは、何しろあの体型だ。ずんぐりしていて可愛い。

有名なSF作家であるダグラス・アダムスと、動物学者のマーク・カーワディンが共著した『これで見納め』(みすず書房)でも取り上げられていた。
ヨウスコウカワイルカを探しに、彼らが中国を訪れた時のエッセイが収録されている。
マイクの防音に使うため、コンドームを手に入れようと奔走するエピソードが面白かった。
文化と言葉の違いが立ちはだかり、様々な誤解を受けつつ、売店をたらい回しにされるのだ。

エッセイ内で詳しく説明されているが、他の大半のイルカと同様、ヨウスコウカワイルカも音を中心とした世界で生きている。
音波を出して、物の位置を感じ取り、コミュニケーションを取る生き物なのだ。
大量の船が行き来する揚子江において、イルカはパニックにおちいってしまう。
コンドームを装着したマイクで河の中の音を録音するのだが、そりゃもう大変なノイズが記録されていたそうだ。
イルカにとって、それはあらゆる感覚を封じられることに等しいのだろう。

結局、アダムスたちが野生のイルカに出会うことはなかった。
執筆された1990年あたりでも、ほぼ絶滅していたからだ。

2006年、ヨウスコウカワイルカは正式に絶滅を宣言されたそうだ。
そもそも個体数が少なかったうえ、自然に生きられる環境とはいえなかったのだろう。

お気づきだろうが、僕は寝れていない。

もうスマホで絶滅したイルカの顛末について調べ始めている。
ヨウスコウカワイルカを目撃した、という近年の報告もあるが、ほとんどがスナメリ(ツルンとした小型の海獣)の見間違いらしい。
へえー。

スナメリといえば。
彼らは小型なのでイルカと思われがちだが、分類的にはクジラと聞いたことがある。
また、背びれがなく、代わりにポツポツとたくさんの突起があり…。

 

(YOU FAILD… 入眠失敗エンド)

 

ピンチ続行の夏休み

夏休みが始まった。正確には、息子の夏休みが始まった。

大人に夏休みはない。
リリースその他で普通に忙しい。新シングル『嘘つきなBaby』よろしくお願いします。

学期の最終日、息子はニコニコで帰ってきた。
「実は宿題のドリル、ちょっと学校でやってきたから、少なくなったのよね~~ん♪」と言いながら。

みんなで一緒に夏休みの宿題リストを確認してみると、算数ドリルや漢字の書き取り、リコーダーの練習などなど、おなじみのメンツが並んでいる。

そして、やっぱり読書感想文だ。毎年なかなか苦戦している印象がある。

「今回はなにを図書館で借りたの?」と聞くと、「これでござい!」とランドセルからハードカバーを取り出した。

『日本国憲法』だった。
『日本国憲法』とは、日本国憲法が書いてある本である。
日本国憲法が書いてある本???

「か、か、書けんの?これで。」

「いや、中身は見てない。なんか短そうと思って。」

おい、小学生すぎるだろ。
短いもなにも、本当に憲法が書いてあるだけなんだから。

本の中身をぱらぱらとめくった息子の表情は、どんどん硬くなっていった。
「やばいやばい」「ほ、法律だ」などと言いながら焦っている。

突然ピンチに陥った我々は、宿題のルールが書いてあるプリントをもう一度確認した。
どうやら2冊借りて、どちらかの感想文を書けばいいらしい。

ピンチ回避!

「もう一冊を見せて!」と言うと、明らかに息子がうろたえた。
口をすぼませ、「チョォ~~~・・・・」と小さい声を出している。ちょっと白目になっている。
どう考えても様子がおかしい。

とにかくもう一冊を見せてくれ、と促すと、もはやこれまで、とでも言いたげに背中を丸め、こちらを向かずにランドセルからハードカバーを取り出した。

『日本国憲法』だった。
日本国憲法、二冊目。

ピンチ続行!!!!