non-fic
スーツを作る
初めて、オーダーメイドでスーツを作りに行った。
生地や完成イメージをスタッフに共有したら、とにもかくにも採寸である。
体のいろんなところに手早くメジャーを当てられ、僕の体が数値化されていく。
「なるほど、なるほど…」(シャッ、シャッ ※メジャーをあてる音)
「お客様、仕立て甲斐のある体型でいらっしゃる…」(シャシャシャッ)
「肩幅に対してバストが大き目、でございますね」(シャキッ、シャキッ)
「ほう、シャープなお尻」(シュッ、シャァーッ)
「脚の形、ステキです。すなわち…」(シャシャシャ~~ッ)
「緩急のある体つきですね」(シャコッ! ※メジャーを巻き取った音)
自らの体型に対して、こんなに具体的に、たくさんコメントを貰ったのは初めてだ。
なんだかわからないが、とにかく悪い気はしない。
衣装になる予定なので、できあがり次第ライブで着用します。
『エイリアン:ロムルス』
『エイリアン:ロムルス』はとても面白かった。
一緒に観た息子が「怖い~」「家に帰ってきても怖い~~」などと言いつつも、「でもフェイスハガーのぬいぐるみが欲しいんだよな」とつぶやく姿を見ていると、マジでいい映画だったなとしみじみ思う。
閉塞感のある日常を変えたい、という願望を持つ若者たちが、変革を目論んだだけなのに酷い目に合う内容だった。気の毒すぎる。
巨大企業が支配するディストピアでの労働からの脱出、だったはずが、化け物が蠢く閉鎖空間からの脱出に取って代わる。
「化け物に襲われて死にたくないけど、あんな生活には戻りたくね~~~!!」という生・人生への渇望が、シリーズ1作目『エイリアン』と同様のシンプルなプロット(狭いところでヤバい奴から逃げる)にフレッシュな説得力を与えていたように感じる。各シーンのキャラの目的も明確で、終始楽しく映画に没入できた。
1作目を踏襲した本作のキモは、もちろんパニックホラー要素だ。
登場人物を襲うピンチに次ぐピンチ。命がけのSASUKEみたいなタスクの連続。
そういった恐怖演出の数々の中核には、エイリアン(ゼノモーフ)を始めとしたクリーチャーの存在が不可欠だ。
その点、今作に登場するクリーチャーの気色悪さはマジで見ごたえがある。
カサカサと部屋の影を這いまわるフェイスハガー!
心臓を突き破って産声をあげるチェストバスターのヌメヌメ感!
アニマトロニクスと特殊メイクで作り上げられたリアリティ、本当にありがとう。お金をもっと払わせてください。
とはいえ、僕はゼノモーフは怖くない。カルチャーアイコンとして長年知りすぎている。
画面に出てきたら「よっ!大スター登場!」と思う。
でも、10歳の息子にとってはそうではない。ゼノモーフを本作で初めて目撃するのだ。
不気味で、気持ち悪く、正体不明。本能で「近づいてはならない」とわかるデザイン。
体を縮め、手汗をかき、時折「ヒョェ~…」と吐息を漏らしながら、映画の登場人物と同じストレスを味わっている様子は、心の底から羨ましかった。
いつか強く頭を打って記憶を失ったら、僕も『エイリアン:ロムルス』からシリーズを観てみたい。
記憶喪失の僕を見かけたら、この記事のこと教えてください。
怪談睡眠
広い家にモノが多いと
広い家にモノが多いと、なぜか怖い。
昔、両親が営んでいた店のトイレに続く廊下には、両サイドに商品が床から天井までギッシリ積んであった。
「崩れそうで怖い!」とかの具体的な恐怖ではなく、そこにあったのは正体不明の不気味さだ。
ばあちゃんの家の2階も、行くのが怖かった。
基本的に2階には誰もいないのに、モノはたくさんある。
貸衣装や布団、写真、少し大きい家電などなどが、整理整頓されて、複数の部屋に収納されていた。
なぜ気味悪く感じるのか。僕だけの感覚かもしれない。
その場にいない人間の痕跡を、色濃く感じるから?
整理されていると、モノの隙間に逆に敏感になるから?
全然理屈がわかっていないが、ばあちゃん家の2階に上がるときは、大人になった今もちょっとだけ怖いのだ。
しかし、数日前に、ばあちゃんは亡くなった。
だから、これからモノはどんどん2階から無くなっていくだろう。
綺麗に片付けられて、隙間はなくなり、新築同然になった部屋が残るのだろう。
もったいない。せっかく怖かったのに。