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映画【ブレードランナー】日本語看板の正体

映画『ブレードランナー』に、多種多様な日本語が登場するのは有名な話だ。

街中の看板にも【おいしい料理】【お手持ちの烏口】【カクテル】【基礎の充実】【壺】など、奇抜な日本語が並んでいる。

未来のロサンゼルスで壺が流行っているのは意外だ。なんでも鑑定団がロサンゼルス出張したりしてるんだろうか。

 

日本要素は表記だけではない。映画冒頭では、ハリソン・フォード演じるデッカードがうどん屋に赴く。

なんらかのメニューを「4つくれ」と注文するが、うどん屋の店主に「2つで十分ですよ!!」と日本語でキツく制されてしまうシーンも、映画ファンの間ではおなじみだ。

ちなみに、デッカードがなにを食べたかったのかは、劇中では不明なままだ。映らないので。

しかし、のちに公開された別カットの映像から、赤黒いキモ~い魚であることが判明している。4つも食いたがるな。

 

さらに気になるのは、終盤で映る看板だ。

「ゴルフ用品 ライター バッグ 万年筆 時計 香水」と書かれている。

これは間違いなくハードオフのことだ。

ハードオフではゴルフ用品と日用品が並列しているし、ショーケースで時計や香水も売っている。

荒廃したロサンゼルスでも、株式会社ハードオフコーポレーションは元気に営業しているのだ。

ということは、『ブレードランナー』の世界でライブが決まったとしても安心だ。

ギターの弦が切れたり、シールドが断線しても、とりあえずハードオフに行けばいいのだから。

 

誠実さのかけらもなく笑っている奴がいるよ

自宅のトイレには本が並べてある。

『羊男のクリスマス』『羊たちの沈黙』『電気羊はアンドロイドの夢を見るか?』の3冊だ。

来客があると「あれはなんだ」「羊が好きなのか」と聞かれるが、全然そんなことはない。

 

『羊男』と『電気羊』をもともと持っていたので、「あと一冊あれば・・・刻子(コーツ)※1 だ!」と思ってブックオフ ※2 にポンしに行っただけだ。

(人生の中で意識せずに手に入れた本は『ツモ』※3 、ブックオフでは誰かが持ってた本を買うので『ポン/チー』※4 とする)

 

上記の旨を説明すると、麻雀を知らない人はポカンとするだけだが、麻雀好きは「なるほど!」等と言ってくれる。

続けて、麻雀好きは当然麻雀トークを始めるのだが、僕は麻雀をよく知らない。漫画でルールをうっすら知っているだけだ。

だから、今度はこちらがポカンとしたり愛想笑いをする羽目になる。

このようなことを繰り返した結果、僕は町でもっとも不誠実な人間として名を馳せている。

 

※1 麻雀用語。同じ牌を3つ揃えること。

※2 この世のすべてが売っている店。

※3 麻雀用語。山から自分で引くこと。

※4 麻雀用語。誰かが捨てた牌をもらう行動。

 

俺のスマホはガラガラヘビ

コーヒーを買って席に戻ると、妻と息子の隣に大きめのアメリカ人が座っていた。

ジェダイの格好で、デカいチキンをほおばっている。
普段なら異様な光景だろうが、今日はスターウォーズ・セレブレーション(大型ファンイベント)の初日だ。
現に僕もスターウォーズのキャラクターの仮装をして、思う存分会場をウロウロしている。

「やあ、ジェダイ」と声をかけると、「やあ、どうも!僕はケニー(仮名)。カリフォルニアから来たジェダイ・ナイトだ。よろしくな!」と満面の笑みが返ってきた。

ケニーは日本に来るのは初めてだということや、先ほど発表された新作映画にワクワクしていることを、意味なくヨーダの物まねを織り交ぜながら教えてくれた。

そしてとにかく笑う。自分でしゃべっても笑うし、こっちがしゃべっても笑うし、少し照れている僕の息子に話しかけては笑う。

笑いすぎて、ホットドッグ用のケチャップを自分の服にこぼしていた。「オー、ノー!!!死ぬ~~~!!」と叫んで、また笑っていた。

 

せっかくだからみんなで写真を撮ろうとすると、ケニーが慌てだした。

「あれっ。スマホが。スマホが見当たらない。」

ないない、と言いながら、ローブのポケットやカバンを探している。

ちょっと、ケニー。と僕と妻が声をかけ、同時に机の上を指さした。最初からそこにあったのだ。こういうことってあるよな。

ケニーは「意外だ!!」という表情でスマホを取り上げ、僕らの顔を見回した。

「もし僕のスマホがヘビだったら、嚙まれて死んでいただろうね!」

そう言うやいなや、ケニーは今までで一番デカい声で笑い出した。涙を流して笑っていた。

なんてこった。ガチモンのアメリカンジョーク。なかなか聞く機会ないぜ。

 

ケニーと写真を撮って、「また会えるのを楽しみにしてるよ」と伝えると、「ああ!次はロサンゼルスで会おう!」とケニーは言った。

なぜロサンゼルス? カリフォルニアから来たって言ってなかったっけ?

そうは思ったが、別に聞き返すこともなくその場をあとにした。

それから数日後。次回のスターウォーズ・セレブレーションの開催情報が発表された。ロサンゼルスで開催されるそうだ。

ケニー、君は関係者だったのか? それとも、本当に予言ができるジェダイだったのか。