non-fic

反射ジェダイ

「俺あのジェダイ好きなんだよな、ジェダイ・マスターでさ、緑色のちょっと魚っぽい人。なんだっけな、名前!」
「ああ、キット・フィストー」

「あの~、なんだっけ。ドラマシリーズに出てくる金髪のシスっぽい…」
「シン・ハティね。ベイラン・スコールの弟子の」

「えーと、エズラの師匠のさ」
「ケイナン・ジャラスだ」


「寒ちゃんは気持ちわりいなあ!!」

「そうなんだよ、俺、自分でも気持ち悪いんだよ!」

 

小林ファンキ風格とスター・ウォーズの話をしていると、ほぼこうなる。
たいていのキャラクターの名前は、考えるより先に反射で口から飛び出る人間なのだ、僕は。

とはいえ、小林もマニアックなので、
「最近通ってる整体が抜群で、指圧師たちを “ブレンドクのグレートマザー”(スター・ウォーズシリーズに出てくる謎の魔女団)と呼んでいる」などと言っていた。
グレートマザーたちの指圧は異常に強く、背中や腰に魔法のように効く、最高、とのことだった。

実はグレートマザーたちが居るのは惑星ブレンドクではなく、外銀河の”ぺリディア”だが、その場で口を挟んだりはしない。

友達の話を止めてまで、キモオタ訂正を始めるほど、僕は落ちぶれていないのだ。

スーツを作る

初めて、オーダーメイドでスーツを作りに行った。

生地や完成イメージをスタッフに共有したら、とにもかくにも採寸である。

体のいろんなところに手早くメジャーを当てられ、僕の体が数値化されていく。

「なるほど、なるほど…」(シャッ、シャッ ※メジャーをあてる音

「お客様、仕立て甲斐のある体型でいらっしゃる…」(シャシャシャッ)

「肩幅に対してバストが大き目、でございますね」(シャキッ、シャキッ)

「ほう、シャープなお尻」(シュッ、シャァーッ)

「脚の形、ステキです。すなわち…」(シャシャシャ~~ッ)

「緩急のある体つきですね」(シャコッ! ※メジャーを巻き取った音

自らの体型に対して、こんなに具体的に、たくさんコメントを貰ったのは初めてだ。

なんだかわからないが、とにかく悪い気はしない。

衣装になる予定なので、できあがり次第ライブで着用します。

『エイリアン:ロムルス』

『エイリアン:ロムルス』はとても面白かった。
一緒に観た息子が「怖い~」「家に帰ってきても怖い~~」などと言いつつも、「でもフェイスハガーのぬいぐるみが欲しいんだよな」とつぶやく姿を見ていると、マジでいい映画だったなとしみじみ思う。

閉塞感のある日常を変えたい、という願望を持つ若者たちが、変革を目論んだだけなのに酷い目に合う内容だった。気の毒すぎる。

巨大企業が支配するディストピアでの労働からの脱出、だったはずが、化け物が蠢く閉鎖空間からの脱出に取って代わる。

「化け物に襲われて死にたくないけど、あんな生活には戻りたくね~~~!!」という生・人生への渇望が、シリーズ1作目『エイリアン』と同様のシンプルなプロット(狭いところでヤバい奴から逃げる)にフレッシュな説得力を与えていたように感じる。各シーンのキャラの目的も明確で、終始楽しく映画に没入できた。

 

1作目を踏襲した本作のキモは、もちろんパニックホラー要素だ。

登場人物を襲うピンチに次ぐピンチ。命がけのSASUKEみたいなタスクの連続。
そういった恐怖演出の数々の中核には、エイリアン(ゼノモーフ)を始めとしたクリーチャーの存在が不可欠だ。

その点、今作に登場するクリーチャーの気色悪さはマジで見ごたえがある。

カサカサと部屋の影を這いまわるフェイスハガー!
心臓を突き破って産声をあげるチェストバスターのヌメヌメ感!

アニマトロニクスと特殊メイクで作り上げられたリアリティ、本当にありがとう。お金をもっと払わせてください。

 

とはいえ、僕はゼノモーフは怖くない。カルチャーアイコンとして長年知りすぎている。
画面に出てきたら「よっ!大スター登場!」と思う。

でも、10歳の息子にとってはそうではない。ゼノモーフを本作で初めて目撃するのだ。

不気味で、気持ち悪く、正体不明。本能で「近づいてはならない」とわかるデザイン。

体を縮め、手汗をかき、時折「ヒョェ~…」と吐息を漏らしながら、映画の登場人物と同じストレスを味わっている様子は、心の底から羨ましかった。

いつか強く頭を打って記憶を失ったら、僕も『エイリアン:ロムルス』からシリーズを観てみたい。
記憶喪失の僕を見かけたら、この記事のこと教えてください。