ある夜、露出狂にでくわした。
コートの下が全裸、というタイプの由緒正しい露出狂ではなく、いわゆる社会の窓からおじさんのホンキートンクがチラ見えしている、奥ゆかしさを感じる露出だった。
駅の近くの、短い横断歩道の向こう側である。
すわ見間違いかと思い、眉根にしわを寄せてしっかり見つめてみると、やはり確実にチラ見えしていた。
丸見えとまではいかない。チラ見えであった。
通報、すべきだろうか。
実は見ず知らずのおじさんではないのだ。
彼は普段から上はTシャツ、下は薄手のTバックのショートデニムという、ダブルTスタイルでその辺をウロついている人だ。
よく駅前のコンビニで、お茶をたくさん買っている姿を見かける。
露出狂ではないのではないだろうか?
なんらかのアクシデントで、しまい忘れているだけでは?
そうこうしている内に、信号は青に変わった。
おじさんは平然とスタスタ歩き、そのまま駅方面へと消えていった。
通報すべきだったのだろうか。
それとも「出てますよ」と教えるべきだっただろうか。
いやいや、どんな性格のおじさんか分からないのだ。
「出てますよ」と声をかけたとたん、「出してんだよォ!!」と激高される可能性だってある。
結果的に、無視するのが一番安全な気がしてしまう。
今夜、あのおじさんに会った住民たちは、この小さい煩悶を抱えるのだろうか。
10分後、普通にパトカーのサイレンが聞こえてきた。


