泡に覆われた人生

*ウンコの話をします。

都内のスタジオで大きいお花を摘んでいて、ふと気が付いた。

便座内がフワフワの泡で満ちている。

そして、ウンコ本体がフワフワの泡で見えない。

いや、別にいい。便座くん、ご配慮ありがとう。

自分が出したはいえ、見たくないときってあるもんな。

このフワフワの泡の”隠す力”たるや、その後落としたトイレットペーパーすら飲み込んで、影も形も見えなくするほどだ。

おまけになんのニオイもしない。

ちょっとの不快感も与えませぬぞ、という強靭な覚悟を感じる。

すごいトイレもあるもんだな、と思いつつも、ある不安がよぎった。

幼少期からこのトイレを使って育ったら、”ウンコ”を知らない人間が出来上がってしまうのでは?

物心ついたときからフワフワ泡タイプのトイレだけを使う、大富豪の子供がいたとしよう。

出したモノも、拭いたペーパーも、すべては泡に覆い隠される。

そんな生活に疑問を持つことなく、やがて成人して一人暮らしを計画。

豊かな実家を飛び出し、ワンルームで新しい人生を始めるのだ。

不安と希望が入り混じる、転居初日。

ふと便意を催し、急いでトイレに駆け込み、無事に事を済ます。

便座から立ち上がり、ふと視線を落とすとそこにはー

マジでどうなるんだろう。気絶するんじゃないか。

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