広い家にモノが多いと、なぜか怖い。
昔、両親が営んでいた店のトイレに続く廊下には、両サイドに商品が床から天井までギッシリ積んであった。
「崩れそうで怖い!」とかの具体的な恐怖ではなく、そこにあったのは正体不明の不気味さだ。
ばあちゃんの家の2階も、行くのが怖かった。
基本的に2階には誰もいないのに、モノはたくさんある。
貸衣装や布団、写真、少し大きい家電などなどが、整理整頓されて、複数の部屋に収納されていた。
なぜ気味悪く感じるのか。僕だけの感覚かもしれない。
その場にいない人間の痕跡を、色濃く感じるから?
整理されていると、モノの隙間に逆に敏感になるから?
全然理屈がわかっていないが、ばあちゃん家の2階に上がるときは、大人になった今もちょっとだけ怖いのだ。
しかし、数日前に、ばあちゃんは亡くなった。
だから、これからモノはどんどん2階から無くなっていくだろう。
綺麗に片付けられて、隙間はなくなり、新築同然になった部屋が残るのだろう。
もったいない。せっかく怖かったのに。