「此度の活躍、大変ご苦労であった。よって、三千石(さんぜんごく)を与えよう。」
「ははーっ。ありがたき幸せ。」
こういう会話、時代劇や小説でちょくちょく見かける。歴史に明るくないため、たいていの事を「こういうもんなんね」と流してしまっていたけど、だんだん気になってきた。
なんなんだろう。偉い人から貰う謎の褒美、『石(こく)』。
いや、うっすら分かってる。たぶん領地のことだ。偉い人から貰える領地の面積、すなわち現代でいう平方メートルを、由来は知らんけど『石』と表現していたのだろう。
「違います。」
え?
「違う、というか正確じゃないですね。中学の社会科で習いませんでしたか?(笑)」
誰?
「『石』とは、領地内で収穫される米の量の単位です。こんな常識も知らないとは、日本の学校教育の水準が思いやられますね…。┐(´д`)┌ヤレヤレ」
最悪だ。ヤフー知恵袋の、知識で人を見下すことで快感を得てる人が来た。
「一石は、成人男性が消費する一年分の米の量=米俵ひとつ分です。たとえば一千石を与えられれば、1000人分の米俵が作れるほどの土地、収入、そしてマンパワーを得ることを意味します。」
説明は分かりやすい…。
「ありがとうございます。人から褒められるって嬉しいですね。もっと褒められたい。砂漠に花を咲かせる活動を始めようかな。」
そうですか、いいことだと思います。
調べたところ、その土地の統治者が一石から得られる収入は、現在の貨幣価値で一年あたり約30万円だそうだ。十石で300万、百石なら3000万! けっこう凄い。
ん?待てよ。
僕の先祖は、戦国時代に香川県を治めていた。給料は一万石だったらしい。
えっ…。
つまり、年商30億円…???
子孫は空中カメラとかいうバンドを自転車操業でやってるのに、先祖は年商30億円…?
なに食ってたんだろう。
駅前の高級食パンとか、躊躇なく買ったりしてたんだろうか。
脇差はCOACHの鞘に収めていたんだろうか。
「えっ、そなたの巾着袋、KateSpadeの新作じゃん!色カワイ~!それがしも買おっかなー。てか双子コーデせん?」とか言ってたのかな。
イヤだな。
絵:田中野歩人 文:寒川響