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バイオニクルと関節
いまは影も形もないが、かつてレゴ社はアクションフィギュアを出していた。
『バイオニクル』シリーズだ。僕の年代の人間しか知らない、謎のオモチャ。
小学生の頃からオモチャの関節稼働に妙なこだわりがあり、可動箇所が多ければ多いほど優れていると思っていた。
ソフビじゃだめなのだ。腕が上下するだけでは、まったく足りていない。
頭の中にある、かっこいいポーズを再現するためには、もっと関節を!もっと関節の稼働を!!
『バイオニクル』はアクションフィギュアとは言え、レゴ製品。
もちろん組み立て式であり、最終的に出来上がるモノのポージングはかなりの自由度を誇っていた。
組み立てが完了したときに「ほお~……」とため息が出たのは言うまでもない。
当時はかけていないメガネもキラリと光る。これは、非常に良いオモチャだ。
愛さずにはいられない、奇妙で有機的なデザイン。
想像の余地をたっぷり残した、謎めいた神話風のバックストーリーがあるのも素晴らしい。
特に敵キャラが好きだった。『ラクシ』という生き物たちだ。
痩せた魚人のようなフォルムもカッコいいのだが、そんなことより関節。関節がいいのだ。

ラクシ
メインキャラクターの『トーア』たちは、肘と膝が動かない。パーツが一体化している。
おそらく安定感のためだろうが、そこだけは惜しかった。腕と足のパーツを倍つなげて、でっかくて関節が動く『トーア』を作ったものだ。(異常に倒れやすかった)
その点、『ラクシ』ってすげえよな。肘・膝関節は分離パーツで、しかも自立するんだもん。
『ラクシ』は前傾姿勢なうえ、物干し竿くらい長~い槍を槍を持っている。
不安定な場所に置いても大丈夫。だって槍で支えればいいから。
片足立ちだってできる。だって槍が支えてくれるから。
これらのオモチャを、いつどうやって手放したかは覚えていないが、持っておけばよかったな~とたまに思う。
自宅に収納がアホほどあれば、過去から未来へ色んな物を持っていけるのに。
あーあ!倉庫が5個ぐらいあったらなあ!
黒崎くんもそう思うよね?

マーダー年越し
マーダーミステリーというボードゲームのジャンルがある。
ロールプレイしながら殺人事件の謎を解こう、という趣旨のゲームだ。
プレイヤーはそれぞれ与えられた役割の中で、それぞれの勝利条件を目指していく。
もちろん、設定上「犯人」であれば、指摘されずに逃げ切ることが条件だ。
12月31日の年の瀬、僕は友達と一緒にマーダーミステリーに興じていた。
紅白を見ている妻と息子を尻目に、「元アイドルの玉の輿セレブ妻」役として、高めの声で犯行を否認していた。
なんだってのよ。アタシ今関係ないでしょうよ。
アンタこそ昨晩の目撃者いないんだから、キリキリ弁明しなさいよ。
マーダーミステリーは、お互いの証言のウィークポイントを突つき合うゲームなのだ。
明らかにとぼけているヤツ、発言すべてがウソくさいヤツ、そもそも普段から何を考えているか分からないヤツ。
友情にヒビが入るんじゃないかと思うくらいお互い指を指しあいながら、殺人事件の真相ににじり寄っていく。
気がつくと、年が明けていた。
いちおう「あけおめ!ことよろ!」くらいは言った気がするが、「そんなことより、キサマ嘘をついていないか?」という話にすぐ戻る。
解決したのは2時すぎであった。
はあ~~なるほどねえ、悲しい事件だったね、などと言いながら、各々が麻雀の準備を始める。
初夢は大三元をツモる夢だった。幸先がいいんじゃないでしょうか。

トーキング・モジュレーター

怖くなるところだった
作曲家の岡部弦くんと廃墟に行った。
もちろん大丈夫な廃墟。立ち入りが合法なタイプの廃墟だ。
その廃墟は、山の中にある。
車を停めていいスペースや、仮設トイレもあり、廃墟なのに至れり尽くせりだ。
もともとは巨大な研究施設だったらしい。
建物自体は老朽化はしているものの、全体的に頑丈に見える。
中に立ち入ることはできないが、窓の外から観察した限り、建物内も大して傷んでいない。
ものすごく活用できそうなのに、なんの活用もされてないのが信じられない。
我々のような物好きがたまに訪れて「ほえ~」「テンション上がるなあ」とか言うだけの場所にしては、あまりにももったいなく感じてしまう。
周囲を散策していると、遠くから音が聞こえてきた。
くぐもっているが、電子音だ。
場違いな音に、思わず僕らは黙って立ち止まる。
耳をすますと・・・知っているメロディ?
【ポポーポ ポポポ♪ ポポーポ ポポポ♪ ポポポポポー♪……】
「これ、スーパーの・・・?」
「呼び込みくん、ですね」
岡部くんがそう言った瞬間、その音は止まった。
改めて言うが、ここは山の中の廃墟だ。
イオンの鮮魚コーナーではない。
だが、聞き間違えようのないメロディだった。
一瞬、嫌な想像が頭をよぎる。
妙にくぐもっているから、遠くで鳴っていると思った。
そうではなく、建物の中で鳴っていた、としたら?
「寒川さん、知ってますか」
岡部くんが声をひそめて言う。
「呼び込みくんって、2万くらいするらしいっす・・・」
ウソだろ? 高すぎる。
せいぜい4000円くらいかと思っていた。
その後、業務用のアイテムって予想とズレた値段だよね、というあるあるで小さく盛り上がり、もともとなんの話をしていたか忘れてしまった。
危なかった。怖くなるところだった。







