
やかましい永遠希望者
死ぬのが嫌だ。
そりゃ基本的に皆そうだろうが、僕はレベルが違う。
永遠に死にたくない。
死ぬと無になる、という説が今のところ有力だからだ。
無になる嫌さと、未来永劫永遠にこの世を彷徨う嫌さを天秤にかけたとき、「・・・生”き”た”い”!!!」と心のロビンが叫ぶのである。
肉体は順調に滅びに向かっているので、早急なサイボーグ化や電脳化技術の普及が待たれるところだ。
培養液入りのシリンダーに脳がプカプカ浮いているアレ、あの状態も理想的である。
このように科学技術を使った”準・永遠の命”はフィクション中において否定されがちで、「命を・・・なんだと思ってやがるんだ!」という主人公の声が聞こえてきそうだ。
それに対しては「うるせーバカ」および「ホントそうですよね」といった、相反する二つの気持ちがある。
向こうの言ってることは正論だが、僕が無害な脳みそくんなのであれば、マジでほっといてほしい。
一方、『火の鳥』などに代表される、マジカルパワーによる不死の実現パターンもある。
マジカル由来の不死は、冗談抜きのガチンコ不死であることが多く、文字通り宇宙が滅んでも生き続けることができる。
全然かまわない。火の鳥の血、ショットでいかせてください。
「はたして12恒河沙年経ってもそんなことが言えるかな・・・?」という不老不死アンチの意見もごもっともだが、もうそんなの生きてから考えたらいい。
まず死にたくない、って言ってんの。こっちは。無とか勘弁だっつーの。
そもそも、人生は短すぎる。
読みたいもの、聴きたいもの、観たいもの、体験したいことの量と、せいぜい90年の人生の長さは釣り合っていない。
さらに自分の表現、アウトプットまでしていたら、何をかいわんやである。
最悪、永遠の命は無理でもいい。
いったん400年くらい生きさせてはもらえないだろうか。
いったん、いったんね。
そこから先は、400年後に考えさせてほしい。

文学フリマ
僕の家から最寄りの映画館まで、車で30分ほどかかる。
住んでいる町には本屋もなく、すなわちタワレコやディスクユニオンも無い。
ひとたび車がなくなると、すっかり文化から隔絶。そんな気分になる。
8月に車が壊れてからというもの、カーペットに突っ伏してインターネットを眺める生活を送ってしまっていたが、これは良くない。
文化的な生活は、自ら掴み取りに行くべきだ。
という訳で、『文学フリマ』の門を叩いた。
ドンドン! すいません、ビッグサイトですか。文学をください。
文学フリマは、いわゆる同人誌即売会の一種だ。
プロ・アマ問わず、みんなのオリジナル”文学”を、思い思いのやり方で表現する場所である。
何時間いたか覚えていないが、とにかくたくさん買った。
買った、というか。気が付いたらカバンが重くなっていたのだ。
日常におけるお買い物に比べて、”検討”のブレーキがかなり甘くなっていた気がする。
「あっ、ある。ください」の連続である。
あっという間にトートバッグはいっぱいになり、ヒモがギチギチと僕の左肩に食い込んだ。
次回はリュックサックで行こう。
現在、コタツテーブルの一角は、文学フリマで買った本と、その翌日にうっかり買ってしまった本で埋まっている。
本棚はすでにいっぱいなので、避難場所としてコタツテーブルが指定されているのだ。
この冬はこれらを読みながら、本棚を作って過ごそう。
車はどうなるかまだ分かっていないが、ちょっと文化が戻ってきたのではないだろうか。

電池切れだミン

テルミン・ミュージアム
全日本テルミンフェスに、出ます。出るんですよ。
にもかかわらず、演奏でテルミンを使っていない。どうしよう。
テルミンに対する知識も乏しいため、とりあえず実物をたくさん見てみたい。
というわけで、テルミン・ミュージアムに足を運んだ。
僕の住んでいる町はミスドすら無いのに、テルミン・ミュージアムはあるのだ。なぜ。
テルミン奏者の大西ようこさんが個人で蒐集したテルミンが、大量に展示されていた。
大西さん本人が案内・解説をしてくれるうえ、一部の展示物は試奏もできる。
ありがとうございました。相当ガイドしていただいたのに、一瞬も音程が取れなくてすみませんでした。
そもそも『テルミン』とは何かというと、電子楽器の一種である。
大きな特徴として、演奏時に手で触れないのだ。
機体に生えているアンテナに手を近づけたり、離すだけで、音程や音量が変わるようにできている。
テルミンのプロの演奏は、「い、今なにが起きてるんですか?」と言いたくなるくらいに魔法的だ。
テルミンが開発された1920年代には、本当に魔法に見えたんじゃないだろうか。
ところで、ミュージアムには黄色いギターがあった。
ZO-3(通称ゾウさん)、ショートスケールのアンプを内蔵したエレキギターだ。
僕が初めて持ったエレキギターでもある。
「大西さん、このギターはいったい?」
「あ、これもテルミンなんですよ」
絶対にウソだ、と思ったが、スピーカー部分に手を近づけるとテルミンの音が鳴りはじめた。
さらに驚いたことに、フェルナンデス社がオフィシャルで発売しているギターらしい。
わけわかんないモン作るなよ。
もちろん、ギター演奏も同時にできる。
というか、それ前提で作られた代物だと思われるが、どうやって演奏するのかは大西さんにとっても謎だそうだ。
ピッキングの際に手首はまあまあ固定されるので、スピーカーに内蔵されているテルミンを同時に操作するのは至難の業。
試してみたが、まったくうまくいかない。
テルミンギターに詳しい方、いらっしゃいましたらご一報お願いします。







