空中カメラの映画好き 寒川響が、
旬の映画や旬じゃない映画について熱く語るコラムです。
毎月20日更新!
1998年。僕は香川の田舎町で、『スター・ウォーズ』旧三部作のVHSをすり切れる程観ていました。
6歳児にとって憧れの世界、本物の宇宙と冒険がそこにはあったのです。

そんな『スター・ウォーズ』シリーズの最新作、フタを開けてみたら賛否両論でしたね!
なぜ本作だけがシリーズの中で特別なのか、個人的に分析しました。公開1ヶ月経ってるから、ある程度ネタバレしてるのは勘弁して!

スター・ウォーズ 最後のジェダイ

2017年(アメリカ)
監督:ライアン・ジョンソン
主演:デイジー・リドリー

「スター・ウォーズ」の10年ぶりの新作として大ヒットを記録した「スター・ウォーズ フォースの覚醒」に続くシリーズ作品で、伝説のジェダイの騎士ルーク・スカイウォーカーを探し当てた主人公レイがたどる、新たな物語が描かれる。

あらすじ引用:映画.com

ライアン・ジョンソン監督は、『最後のジェダイ』を懐古的な映画にすることを選びませんでした。歴史が長く、伝統的なシリーズであるがゆえに”スター・ウォーズらしい演出”というものが存在するのですが、今作ではその辺をあえて重視しなかったように思われます。
例えば、レイがフォースの修行をするシーン。セリフに合わせて素早くカットが切り替わる演出は、”スター・ウォーズ的な演出”ではありません。草木が芽吹く様子が早回しで挟まりましたが、今までスター・ウォーズでこの技法が使われた事はありませんでした。
特攻シーンで完全な無音になる演出も、落ちていく爆弾のスイッチをスローモーションで描く演出も、レイの心の声をナレーションとして挿入する演出も、枚挙に暇がありませんがすべて違います。これまでのシリーズが選択し得なかった、現代的な新しいセンスです。
これらはしかし、『スター・ウォーズ』を求めて観に来たファン達にとって、強い違和感だったと思います。今作のいくつかのカットで採用された、スローモーションや早回し、またはナレーションという技法は、効果的ではありますが「映画である」ことを観客に気づかせてしまう諸刃の剣です。だからこれまで使われたのは一度だけ、『帝国の逆襲』でのルークが見た幻影シーンのみです。たぶん。忘れてるだけかもしれないけど。
さらにストーリー面も異質です。敵味方どちらも、失敗し続けるのです。
『スター・ウォーズ』はウォーズって言ってるくらいだから戦争の話なんですが、基本的にネアカです。戦争なので双方に作戦があり、各エピソードでどっちかの作戦が”成功”してヤッターとかクッソーとか言う訳です。
しかし、『最後のジェダイ』は”失敗”が主なテーマになってます。良い奴も悪い奴も、伝説のジェダイさえも、失敗し、敗北するのです。
“失敗”はこの映画全体にまとわりつく、不穏な空気の正体です。いつもの『スター・ウォーズ』ならば爽快に解決してくれるアレコレが複雑に積み重なって、キャラクターたちを追いつめていく様が丁寧に描き出され、受け入れがたい要因の一つになっていると思われます。
価値観が多様化し、イージーに様々な作品に触れられる現代で、人の心を動かすのは難しい事です。かつてと同じ価値観で『スター・ウォーズ』を作っても、現代で作る意義のある作品になり得なかったと思います。
重ねた失敗を糧にできるか否かで、本作においての真の勝利が浮き彫りになる訳ですが、やはり今までのシリーズとは別の答えが提示されます。
作中でローズが言ったように「生き残る事が勝利」なのです。失敗を学び、戦争から背を向けてでも生き残るのが、勝ち。
生きる、というのは戦争を越えた本質的な勝利に他なりません。また、戦争そのものの拒絶でもあります。かつての僕のようにこの映画を繰り返し観るであろう子供たちが、受け取るメッセージのひとつになるでしょう。
本作が取り入れた現代的、映画的なエッセンスを僕はとてもポジティブに捉えています。次の世代の『スター・ウォーズ』が観れたと感じていますし、『フォースの覚醒』のみならず、あらゆる過去作の続編として面白かったと思います。
なにより、一本の独立した美しい映画でした。次作の公開を楽しみに、明日も生きていきます。
あと余談なんですが、どう見てもキンタマから青い母乳を出す生き物が登場します。観てない方は必見です。

▼【ライブ情報!】

【もうすぐ!】

Smooth Ace  presents マンスリーライヴシリーズ

「OPEN THE DOORS」2018 Jan.~ Jun  @代官山 晴れたら空に豆まいて

1月29日(月)
open 18:30 / start 19:00
会場:代官山 晴れたら空に豆まいて 
出演:空中カメラ/Smooth Ace(w/ツヤトモヒコ[vo]、レモン[vo]、江草啓太[pf])

料金:予約3,500円/当日4,000円 (全席自由、1ドリンク別)
ご予約受付:予約受付中
予約方法:メール予約(整理番号順入場)
受付メールフォーム http://mameromantic.com/?cat=20

お問い合わせ:晴れたら空に豆まいて 03-5456-8880

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