空中カメラの映画好き 寒川響が、
旬の映画や旬じゃない映画について熱く語るコラムです。
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シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア

2014年(アメリカ)
監督:ジェマイン・クレメント、タイカ・ワイティティ
主演:マイケル・シャノン

現代の社会で一緒に暮らしているヴァンパイアたちの日常をモキュメンタリータッチでつづるホラーコメディー。それぞれに個性豊かなヴァンパイアたちが織り成す愉快な暮らしぶりや、共同生活の行方を描く。

あらすじ引用:シネマトゥデイ

ヴァンパイアあるあるをイジり続ける、モキュメンタリー・コメディ。タイトルの通り、4人のヴァンパイアが屋敷で同居しています。
日光を浴びたら死ぬから昼夜逆転は当たり前。意味なく空中浮遊もするし、ケンカするときはお互いコウモリに変身。そんな彼らの共同生活に取材カメラがお邪魔しました、という体で描かれます。
先に書いたように「ヴァンパイアあるある」が高精度かつ、ぬるま湯のような温度で繰り出され続ける訳ですが、そもそもヴァンパイアなんてものは実在しないので、映画そのものが「無い存在のあるあるを言い続けている」という巨大なギャグに内包されています。僕は「無いこと」の笑いに非常に弱い(例えば「日本一アメリカンな県「アメリカ県」の名産品を教えて下さい」というお題があったらそれだけで笑ってしまう、そんな県は無いから)ので、恐らくこの映画に対しても笑いの沸点が若干甘いんですが、同じような趣味の人には特にオススメです。
ヴァンパイアが平然と生活する世界観は異常そのものなのに、ツッコミが誰もいない、いわば観客しかツッコミ役がいない構図は、松本人志のコント映像集『ビジュアルバム』に通ずるものがあります。名作と呼ばれる映像集ではあるものの、大爆笑できる箇所は意外と少なく、むしろ意図的にそういった大きい笑いが起きる要素から外しているように感じます。ただ一言「お前これなんやねん!」とツッコミを入れればドカンと来そうなのに、誰もそれはやらない。異常な人が出てきても、異常さにうっすら怯えたり、普通に舌打ちしたりするだけです。
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』もほぼ同じ構図がありまして、ヴァンパイア屋敷のメンバーに、中盤から普通の人間が一人混じるんですよ。stu
右手前が普通の人間・ステュー。他の二人はヴァンパイア。

ステューは単に展開に巻き込まれてここにいる訳ですが、コメディ映画的には何百歳も生きてて感覚がズレまくってる吸血鬼たちに「なに言ってんの君ら」とツッコミを入れて欲しいところを、こいつはなーーーんにもしません。普通に居るだけ。吸血鬼達に対しても(たぶん)普段通りのコミュニケーションプロセスを踏襲するせいか、なぜか気に入られていきます。状況に怯えてるのか、楽しんでるのかも絶妙にわからない。普通すぎて。
この辺はもう好みだと思いますが、僕はめちゃめちゃ笑いました。普通の人間である事が一番のボケになってしまう環境づくり、スゴいなと思います。「お笑い臭さ」をあえて排斥することで、ピュアな「変な世界観」だけを残す、ドリップコーヒーみたいな映画ですね。
はい。長々と書いておいてアレですが、ご鑑賞の際は、上記ぜんぶ忘れてくれて大丈夫です。
僕、この映画をある人から勧められたとき「この映画、頭カラっぽにして楽しめるから☆」みたいな事を言われたんですが、結果的にお笑いオタクみたいな事ばっかり考えてしまいました。もっと・・・もっと素直に生きたい・・・。
次回は『スターウォーズ:最後のジェダイ』ついて書けたら書こうと思います。賛否まっぷたつの映画ですが、僕は大肯定派です。まともに書くと多分10000字越えるんで、要素絞って頑張ります。また来月。

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